"平和の原点"を見つめ、この地球から核と戦争をなくしましょう。
このサイトは、埼玉県坂戸市で毎年行われる「ヒロシマ市民の描いた原爆絵画展」の記録を掲載しています。
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ひとりでも多くの人に伝えたい

岡村ひさ子

 今年の夏は酷暑という言葉がぴったりの夏だった。実行委員も体力不足、手不足で細やかなPRができなかったと思う。そんな中、会場を訪れてくださった方々は昨年より多く、今、戦争について考えたい、日本も戦争にまきこまれていくのではないか、という不安を抱いている人がいるからだと思った。ひとりの中学生ぐらいの女の子が熱心にパネルをみていた。くいいるように何度もみている姿に私は自分のことを思い出した。

 私が中学生の時、私の部屋の本棚にどういうわけか「昭和と戦争」を特集した毎日グラフがあって、夏休みの夜更け、家族が寝静まってからその写真に見入っていた。「不許可」と印の押された白黒の写真の多くは日本軍の敗惨ぶりがわかる写真で、多くの死体がごろごろ横たわっていた。父は満洲から引き揚げてきた経験から、私たち子どもには死体は見せるべきではないと考えていたから、初めて目にする多くのむごい死体は衝撃だった。人間は死ぬとこうなるんだ。しかも戦争で死んだら尊厳も何もなく、誰が誰だかわからない。野ざらしにされた人もいたんだ。この兵士にも家族がいて、家にいればよいおとうさん、おにいさんだったのに、よその国で人を殺して冷たい土の上で息絶えている。ヒロシマ・ナガサキの写真もたくさんあった。本当に戦争はいやだと思った。もう二度と戦争を起こしてはならないと心底思った。

 この8月、パレスチナ・イスラエルでも戦争は止むことなく、ロシアではチェチェンの独立を求める武装勢力による爆破事件が多発し、政府の強硬策が過激さを増している。アメリカは「対テロの勝利は困難だが撤退はしない」と戦争の継続を表明した。また、アフガニスタン・イラクに続き核兵器開発の可能性があるとの理由で、イラン制裁に走ろうとしている。アメリカは「ならず者国家」を敵とみなし、「手遅れになる前に脅威にたち向かう」という姿勢を9.11のテロ以来鮮明にしているが、国際社会ではとても認めることができない。なぜなら、アメリカこそが包括的核実験禁止条約に背を向け、核兵器の開発に余念がないからだ。他国の核保有には制裁も辞さず、自国の核戦力は強くするという考えなのだ。一番大量破壊兵器を保有しているのはアメリカではないか。そしてイラク攻撃では大量の劣化ウラン兵器を使用している。その破壊力と放射能汚染のすさまじさは新しい型の「核戦争」が始まったと言えるだろう。

 私が中学生だった頃から40年経ったが、地球上から戦禍は絶えることがなく、このところは激しさを増している。米英のイラク攻撃が始まる前、地球規模で戦争反対のデモやパレードが繰り広げられた。1千万人の人々が反対しても戦争を止めることができなかったという人もいるが、希望を失わず、戦争は愚かなことだ、いかなる理由があろうともしてはいけないという人を確実に増やしていきたいと思う。