"平和の原点"を見つめ、この地球から核と戦争をなくしましょう。
このサイトは、埼玉県坂戸市で毎年行われる「ヒロシマ市民の描いた原爆絵画展」の記録を掲載しています。
原爆ドームイラスト ホーム  > 2003年 第11回原爆絵画展報告集目次  > 劣化ウラン弾で被爆者激増

劣化ウラン弾で被爆者激増

高柳允子

 「原爆絵画展」には、いつも、「プラスアルファ展」があります。今年はこのプラスの部分で、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾の恐ろしさがアピールされました。広河隆一さんの写真は、「アメリカはイラクで何をしたか」と、その著書にちなんだ表題を掲げて掲示されました。沖縄市民連絡会のリーダーとしてイラクを訪問したうぶさと伝導所の牧師・平良夏芽さんの写真も掲示されました。

 ビデオ「劣化ウラン弾の恐怖」は、アメリカの科学者、元軍人、看護師等々の証言集になっていて、貴重でした。

 核実験に立ち会った兵士たちはその毒性について全く知らされていません。湾岸戦争以来の劣化ウラン弾についても、全く情報があたえられていなくて、身体異常について訴えても、ペンタゴンはしらんぷり。公然と訴えた学者や看護師はポストを失うなどという事態になっています。

 ビデオに登場したイラクの軍医は、「広島・長崎と連帯したい」と発言していました。この発言を聞いた時、ここに展示されている広島市民の描いた原爆絵画がにわかに生きて迫ってくるのを感じました。58年も前に人類初のむごい放射能被害に苦しんだ人々が、こんなに訴えているのに。展示されている絵本が、写真集が、被爆者絵画と並んで、「もうやめて」と訴えているのに。政治の権力者と軍人たちは、自国の兵士さえも犠牲にしながら、大量殺人兵器開発をますますエスカレートさせているのです。

 劣化ウランについての解説文にもうなりました。まったく同感です。

 「劣化ウラン弾が平常兵器扱いだと! これこそまさに核兵器であり、長期間人類を死に追いやる大量破壊兵器ではないのか! こんな残虐で非人道的な兵器で多くの子ども達や市民を殺戮しておきながら、相手を『悪の枢軸』ときめつけ、自分は自由と正義の実践者とわめく某国大統領、その頭脳のフシギな単純さと独善に呆れるとともに、心の底から怒りを覚える。」

 情けないことに軍事力が拡大していくことをいいことだと思っている人々がいます。誰もが平和な世の中がいいに決まっているといいながら、その平和を壊す行為を許してしまっています。

 私たちは、希望のない世界に生きているのでしょうか。強大な軍事力に守られていると信じて、今日一日の幸せのみを追いかけている人々にまざって滅びへの階段を転げ落ちていくのでしょうか。

 ビデオに登場するセーラ・フランダースさんは言います。「情報は力です。情報が総動員された時、それは実際化学変化を引き起こします。怒りに転じるのです。それは爆発的な力を発揮し、大きな変化を促す可能性を秘めています。私たちの秘密兵器なのです。」

 そうです。私たちはこの絵画展やその他の方法で、倦むことなく情報を発信し続け、力の結集する時を待つのです。

 そして、ここにはアオギリがあります。平和への希望を育んでいる人々のムレがあります。会場に入って、広島からやってきた被爆アオギリの種がこの地で育っているのを見る時、ささやかな希望を感じるのです。